後藤神輿店と行徳の歴史を紐解く冊子「後藤神輿とその時代」が発行される
千葉県市川市の後藤神輿店で発見された400枚以上の撮影済み写真乾板(ガラス乾板)を元に、後藤神輿店と行徳の歴史を紐解いた冊子「後藤神輿とその時代」が、行徳まちづくり協議会により発行された。
貴重な資料を写真集として残したい
ガラス乾板を発見したのは、後藤神輿店の齋藤知子さん(八世・後藤直光=故・渋谷和夫氏の長女)。「行徳まちづくり協議会」のメンバーに連絡し、このガラス乾板を見てもらうことにした。
連絡を受けた協議会のメンバーは根気強く全ての写真を調べ、この約400枚の写真に、大正中期に後藤神輿店が神輿づくりを始めてから昭和初期までに制作された多くの神輿や山車、彫刻などが写っていることを突き止めた。さらに写真には、当時の行徳の町並みや江戸川の風景、人物の姿などもしっかりと記録されていた。
メンバーは、これを貴重な資料として写真集を作成することを決意。ガラス乾板に浮かび上がった後藤作品を追って、現存する後藤作品を特定していった。
北は岩手 南は台湾まで 神輿の行方を追った
「第一章 神輿・山車編」には、東京を中心に北は岩手、南は台湾まで納品された神輿の写真(ガラス乾板)と、現存しているものは現在の写真を入れ同時に紹介している。
「専門家によると、ガラス乾板はとても粒子が細やかで、特に大判のものは拡大しても明暗が正しく再現されるとのこと。そのため見つかった乾板は豊富な情報量を有し、しっかりと写った神輿の形状や文字などを頼りに、その行方を辿っていくことができました」と協議会の峰崎進さん。
協議会には神輿の歴史や形状に詳しいメンバーもおり、知恵を出し合いながら神輿の所在を追った。時には現地に赴き、直接話を聞いた。「神輿の納受先を追求し、今でもそれが現存し活躍していることが確認できたときは、メンバー一同大いに喜びました」
冊子には神輿だけでなく「第二章 彫刻編」「第三章 暮らし・まち編」と、写真に残された後藤神輿店と行徳のまちの風景が紹介されている。
川沿いの風景や当時は珍しかったであろう「トラック」に乗る人々など、昔の行徳に暮らした人たちの姿が生き生きと映し出され、その暮らしぶりが想像できるようだ。
「100年前の『素顔の行徳』の姿が映し出されており、その時代を思い起こさせてくれます。この写真集で皆さまがその時代へタイムスリップできましたなら、とてもうれしいです」と、編集後の感想を語っている。