上下の歯を必要以上に接触させる「食いしばり」は歯に大きな負担をかけるという。無意識の癖「TCH」も問題になっている。それらについて、市川市歯科医師会の佐藤忠敬歯科医師に話を聞いた。
食いしばりの悪影響
新年を迎えて新たな気持ちで何かにチャレンジしようと前向きに考えておられる方も多いと思います。
実はストレスには「ポジティブストレス」と「ネガティブストレス」があり、新しいことへの挑戦や、環境の変化、趣味を見つける、などといった「前向きな体験」も脳にとってはストレスとなります。平常とは違った環境に身を置くこと自体がストレスなんですね。でも、ポジティブストレスは集中力や幸福感を高めて生活へのエネルギーになります。
一方、「望まないストレス」や「過度なストレス」といったネガティブストレスは、心身の不調の原因となります。その影響が口腔内にも表れることがあり、代表的なものとして「食いしばり」があげられます。
これは睡眠時に歯を強く噛みしめてしまうことで、歯が欠ける、折れる、割れるなど、虫歯・歯周病に次ぐ歯を失う大きな原因になりつつあります。
さらに、起きているときにも無意識のうちに上下の歯を接触させてしまう『TCH』という癖があります。
TCHとは
TCHとは、『Tooth Contacting Habit』の略で、日本語に訳すと『上下歯列接触癖』といいます。
上下の歯は食事や会話をするときを除いて、接触しない状態が正常です。ところが、TCHがある人は、パソコンやスマートフォンを使っているときやテレビを観ているとき、家事をしているときといった、何かに集中しているときに知らず知らずのうちに上下の歯が接触してしまうのです。このようにTCHとは「上下の歯が接触していることが習慣化している」状態をいいます。
「ただ単に接触しているだけ…」や「食いしばりのように強く噛んでいないから大丈夫」と思われるかもしれませんが、軽く噛んでいるつもりでも歯には㎏単位の力が加わります。これを放っておくと食事の際に冷たいものがしみたり、あごが痛くなるなどの不調を来すこともあります。またTCHが長く続くようになると長時間にわたり歯や歯肉・骨・筋肉等々に歪みが加わり続けるので、肩こりや頭痛を引き起こしたり、歯周組織がダメージを受けて歯周病や知覚過敏が悪化し歯根破折の原因にもなり得ます。
TCHは何かに集中しているときに強くなりやすいので、なかなか自覚できない場合があります。
チェック方法は?
簡単ですのでぜひ試してみてください
①正面を向いて、上下の唇を軽く閉じる(このとき、唇に力を入れないように)
②そのままの状態で、上下の歯が触れないように軽く離す
この状態を5分続けられるか試してみます。違和感がある場合や5分続けられないと感じた場合はTCHの可能性があります。
TCHはなるべく早いうちに自覚して改善することが大切です。上下の歯が接触していると気づいたら、すぐに歯を離すように意識してください(口を開けるイメージではなく、唇は閉じたまま歯を離すイメージです)。
ご自身が「TCHかもしれない…」と感じた方は、かかりつけの歯科医師にご相談ください。