たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
俳句づくりには写実はもちろん重要ですが、一方では「文芸は虚と実の被膜に生まれる」とも言われ、五七五の短詩である俳句を「実」以上に見せるための「虚」を加えることも魅力な表現法となっています。ある意味では、オーバー表現とでも言うこともできますが、浮世絵の葛飾北斎の神奈川沖浪裏の富士のように、写実以上にリアリティーを表現することもできます。俳句の季語においても、見えないはずの風について以下の俳句のように秋の風を表現しています。
「石山の石より白し秋の風」松尾芭蕉
「反古燃ゆる色なき風に飛び火して」森岡正作
いちかわ俳壇
特選
- 自転車を放り出したる大夕立
(宮久保/まさみ)
【評】自転車に乗っていて、突然の夕立になったのでしょう。前方を見ることができないばかりでなく、全身びしょ濡れです。もう「自転車はヤーメタ」と言わんばかりの気持ちを「放り出したる」とオーバーに表現したことが、夕立の凄まじさを物語っています。 - 我はまだ生の真中よ法師蟬
(国分/青空)
【評】法師蝉を別名「つくつくぼうし」と言い、ツクツクホーシ・ツクツクホーシ・オーシーヨーと鳴くように聞こえます。夏の終わり、この声を聞くと夏の盛りの終焉を告げているようで、寂しい気持ちになります。作者は、自分の人生はまだまだ盛り、今も生きている真っ最中だと主張しているようです。
佳作
- 水銀柱日々炎帝へご注進
(宮久保/虚空) - 外灯の灯りはじめのかなかなかな
(葛飾区/白翠) - 口ずさむ歌は牧水夜の秋
(松戸市/若仙人)
行徳俳壇
特選
- 墓石に路銀の跡や蝸牛
(南行徳/敬芳)
【評】墓石の上を蝸牛がゆっくり進んでいます。その後には銀色に輝く蝸牛の足跡ができています。人が旅するならば旅費がかかり、昔の旅人はそれを「路銀」と呼んでいました。蝸牛のゆっくりした行程は正に旅のようで、銀色に光っているのは蝸牛の「路銀の跡」でしょう。上手い措辞を思いついたものだと感心しました。 - 湾岸に灯のリング無月かな
(幸/汐風 爽)
【評】 行徳は東京湾に面しています。夜間そこを訪れた方は、湾を取り巻く湾岸の灯りを目にするはずです。「無月」は陰暦八月十五日の夜に雲が広がり、中秋の名月が見ることができないことを言います。そんな月の見えない夜には、湾に沿ってリングのような灯りが一層輝いて見えたことでしょう。
佳作
- 勝負後の永久の友情パリ五輪
(行徳駅前/人魚姫) - 鰯雲寺町つなぐ小さきバス
(富浜/流子) - 山桜桃の実いつか遠のく母の郷
(宝/相川 薫)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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【9/27~10/18募集分】