むし歯でなくても歯は溶けるってほんと?
炭酸飲料等で歯が溶ける…って知っている? それが近ごろ問題視されている「酸蝕歯(さんしょくし)」だ。その原因と気を付けるべき点について、市川市歯科医師会の澤野宗如歯科医師に話を聞いた。
酸蝕歯(酸蝕症)ってなに?
酸蝕歯は、歯周病、むし歯に次ぐ「第3の歯科疾患」として近年問題になっています。最近の調査では、酸蝕歯がある人の割合は26・1%、約4人に1人という結果が出ました。エナメル質段階が19・3%、象牙質段階まで進行している人は6・8%にのぼります。
歯は、表面からエナメル質、象牙質、歯髄の3層で構成され、エナメル質は体の中で最も硬い組織。象牙質はエナメル質よりも柔らかく虫歯になると非常に広がりやすい部分です。そして、歯髄は神経や血管が通っている部分です。
むし歯ではないのに、飲食物の酸などによって歯が溶ける酸蝕歯は、歯の着色や損耗によって見た目が悪くなったり、かみ合わせが良くなくなったりするほか、放置すると表面のエナメル質が溶け、その部分からむし歯になりやすくなると言われています。
酸蝕歯の症状はさまざまで、冷たいものや熱いものがしみる、ライトなどで歯を照らすと一部透けて見える、歯の角が丸みを帯びる、歯の表面につやがない、歯の表面に小さなへこみが見られる、詰め物やかぶせ物が外れやすくなるなどが挙げられます。
酸蝕歯の原因は?
性の飲食物に歯が長時間さらされることが原因です。水素イオン指数PH(低くなるほど酸性度が増す)が5・5以下になると、表面のエナメル質は溶けやすくなります。
ゆえに、酸性度の高い柑橘類、酢、炭酸飲料などの飲食物を頻繁にとっている人は注意が必要。また、胃食道逆流症など胃や食道の病気、あるいは暴飲暴食といった生活習慣などで、胃酸が逆流する状態が続いていると、口の中が酸性に傾き、酸蝕歯になりやすくなります。
○食酢が体に良いからと習慣的に飲み続ける
○毎日炭酸飲料水(炭酸水を含む)を飲む
○美容のため毎日ビタミンCを夜間摂取し、そのまま就寝する
○梅干しを毎日数個食べる
〇毎日ジョギング後の水分補給に、ビタミンドリンクや食酢ドリンクを愛飲している
〇部活中、熱中症予防のため少量ずつスポーツ飲料を飲んでいる
〇朝食後は健康のためグレープフルーツを食べ、その直後にしっかり歯みがきをする(酸性度が高いものを摂取し、エナメル質を軟化させたところにゴシゴシと硬い歯ブラシで歯を磨くと、エナメル質は過剰に削られる)
〇赤ちゃんに哺乳瓶でジュースを飲ませる
〇お酒は、チビチビ飲むのが好き(少しずつ飲む方が体への負担は少ないが、酸に触れる時間が長くなるため、歯への負担は増える)
以上、注意が必要です。
自分で予防できる?
歯磨きは基本です。セルフケアとしては、歯質を強化するフッ素などの成分が含まれている歯磨き剤を使って磨きましょう。
酸性の飲食物を口にしたら、そのあと水やお茶を飲むこと。酸っぱいものを食べたら、直後の歯みがきは控えること。口が渇いているときは、酸性の飲み物は避けること。赤ちゃんに哺乳瓶でジュースを飲む習慣をつけないこと。歯磨きは軟らかい歯ブラシを使いましょう。
☆特に気を付けたほうが良いもの3つ
①炭酸飲料水 全般にPH値の低いものが多いです。近年の健康志向を背景につくられたカロリーオフ炭酸飲料もPH値はやはり低く、カロリーオフといっても、歯に良いとは限りません。
②アルコール類 PH値が低いのは缶チューハイ・梅酒・ワイン。毎日じっくり晩酌に時間をかけて飲んでいる方は、注意が必要。
③調味料 PH値の低いのは、ドレッシングとポン酢。酢の物・酢をつけて食べる餃子・トムヤムクンなども注意するべき食べ物です。
健康志向の高い方のライフスタイルは概して規則正しく、また意志が強いだけに、一度決めると習慣化して長期にわたり継続することが多いようです。気付いたときにはひどい酸蝕歯になっていることが少なくありません。体に良い飲み物が、歯に良い飲み物であるとは限らない点をご注意ください。
また、酸蝕症は、かぶせ物が脱離しやすくなり、二次的にむし歯になるリスクが高まります。むし歯は、一度進行すると元に戻すことはできません。健康な歯を保つために、かかりつけ歯科医院を持ち、日頃から正しい口腔ケアを心がけましょう。