たくさんのご応募ありがとうございました。
ご応募いただいた中から見事選ばれた特選2句、佳作3句を発表いたします。
選者コメント
新年の季語は、冬の季語でも春の季語でもありません。
日本の行事の中で一番重要な催しである正月行事は、歳時記においても特別な季語が存在します。
初日、初景色、初御空、初電車、初笑、初夢、初詣、書初など、一年の初めということで「初」の字のつく季語で溢れています。
ただ、新暦では正月行事が終わってから、二十四節気の「小寒」と「大寒」となり、「立春」までの約一カ月間が最も寒い季節となります。この一番寒い時期に中山法華経寺では、修行僧が冷水を浴び、お粥を食べ、百日間の厳しい荒行を行います。
「春待つ」という季語が今の時候にぴったりのようです。
いちかわ俳壇
特選
- 紅き根は土の愛情ほうれん草
(八幡/ニアピン)
【評】鉄分とビタミンが豊富なほうれん草は寒い時期の滋養には最適な野菜です。土の被っていた根の部分は赤い色になっています。それを中七「土の愛情」と表現することで、上手く表現しています。 - 永劫に光旅する冬銀河
(新松戸/若仙人)
【評】無数の星が集まって河のように見える銀河。星々が放つ光は宇宙の果てへどこまでも飛んで行くのでしょう。光は人が想像できない果てしなき無限を永遠に旅するのでしょうか。「冬銀河」の措辞が宇宙の寂寥感を彷彿させます。
佳作
- 山茶花やビニール傘の透けて夕
(宮久保/旅人) - 幕間に黙礼返す初芝居
(葛飾区/白翠) - 富者貧者同じ聖夜の星を浴ぶ
(鬼越/桜守)
行徳俳壇
特選
- 散りてなほ根元彩る冬紅葉
(富浜/流子)
【評】東京の十二月は冬の季節に入ったと言われますが、公園にはまだまだ紅葉が見られます。散った紅葉が樹を囲むように地面を鮮やかに彩っています。冬の初めの景を綺麗に描いた句です。 - 手のマウス早くも馴染み初仕事
(本塩/雄心)
【評】新年の初仕事。今や仕事は鉛筆やペンを握ってするのではなく、初仕事もまずパソコンを開いて、マウスを動かすのでしょう。正月休みで動かしていなかったマウスもすぐに手に馴染んで仕事がスムースに進んで行きます。現在の仕事始めをうまく捉えた句です。
佳作
- 荒行の気合諸共寒の水
(幸/汐風爽) - 後部席に東京ばな奈年の暮
(行徳駅前/辰巳姐さん) - 老犬を懐に入れ冬散歩
(福栄/三河次郎)
選者略歴峰崎成規。昭和23年生まれ。
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