認知症は誰もがなりうる病気。何か気になったり、医学的な相談をしたいと思ったら、早めに医療機関を受診してみるとよい。
「認知症外来」があるタムス浦安病院の竹内正人医師(院長代行、千葉大学病院浦安リハビリテーション教育センター特任教授)に話を聞いた。
竹内正人医師
認知症のサインに早く気付けるように
国の推計では、2025年の65歳以上の認知症患者数は約700万人(5人に1人)に上るという。私たちの誰もがその可能性を持っているということだ。
「昨日何を食べたか思い出せないのは、加齢によるもの忘れ。食べたこと自体を忘れているのは認知症の可能性がある」と竹内医師は説明する。
特徴として、「出来事をまるごと忘れていて、忘れたという自覚もない」のが認知症。探し物についても、「加齢によるもの忘れ」ならいつかは見つかるが、認知症の人の場合はいつも何かを探していて、やがて誰かが盗んだと怒るようにもなる。また、リモコン操作や、銀行でお金を下ろすなどの、手順を踏む作業がうまくできない。
「家族やヘルパーなど近くにいる人は、こうした認知症のサインに早く気付いてあげることが大事です。認知症は進行する。やがて、外出して迷子になったり、転んでけがをしたりと、症状は拡大してしまいます」
認知症の検査方法
軽度認知障害は治せることも…
「認知症外来」は、認知症かどうか分からない段階でも受診可能。
検査では、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、MMSE(ミニメンタルステート検査)などを用いる。どちらも患者が設問に答える形式で、15分程度で終了。30点満点のうち何点かによって認知症であるか、また、その程度(ステージ)を評価する。併せて、脳の画像診断も行う。
時に検査により「治せる認知症」が見つかることも。原因は、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症などで、前者2つは手術で、後者2つは投薬などで治すことができる。
「軽度認知機能障害(MCI)は自立した生活ができないほどではないので、受診が遅れがち。でも早期発見し、必要なケアをすれば16~41%の人が回復します。しかし、放置すると5年で約半数が認知症に移行します。早期の受診と介入が大事です」と竹内医師。
認知症デイケア
2024年10月15日開設
認知症には、そのステージに応じてさまざまな医療支援が必要となる。
竹内医師の病院では2024年10月15日に「重度認知症患者デイケア」を開設予定。認知症の人が日中、安心して過ごせる居場所を提供するという。これは医療保険によるサービスで、介護保険との併用も可能。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士ら専門職のサポートがあるので、家族にとってもうれしいサービスだろう。施設入所者も利用できるそうだ。
「認知症のステージと、その人が置かれている家庭や社会の環境にも配慮し、生活習慣改善やリハビリテーションなどの医学的ケアを行います。患者がその人らしく、地域の中で共生することが、認知症の進行を抑え、患者・家族の安心につながると信じています」と竹内医師は強く語った。
認知症を正しく理解し まずは専門医を受診
早期に受診することで、早期に適切な対処が可能になる。
「認知症と診断されることに抵抗感があれば、健康診断があるからと足を運んでみては」と竹内医師。
認知症外来は、もの忘れ外来と呼称する病院もある。そのほかの脳神経内科や脳神経外科、総合内科などに問い合わせしてもよい。
「認知症は脳の病気。激しいもの忘れや、良くない言動があったとしても、その人の人格や性格が悪いわけではない。感情的にならず、認知症を正しく理解し、その人を尊重しましょう」と竹内医師は結んだ。