認知症は高齢者がかかる病気と思われがちだが、65歳未満でも発症することがあり、「若年性認知症」という。
7月28日(日)、J:COM浦安音楽ホールで「浦安市において若年性認知症を共に考えるシンポジウム」(社会福祉法人東京栄和会主催)が開催された。
浦安市は千葉県内初の認知症施策に関する条例「浦安市認知症とともに生きる基本条例」を令和4年に施行。認知症になっても暮らしやすいまちづくりには、認知症について広く知ってもらうことが必要として、さまざまな講演会やイベントを開催している。
今回のシンポジウムでは、基調講演と、当事者家族と支援者によるトークセッションが行われた。開会にあたり、うらやす和楽苑の鈴木信男苑長は「若年性認知症の場合、当事者のお子さんがまだ学生である場合も多い。認知症になってからも長く地域で暮らす必要があります。そのため、地域の方々に若年性認知症について考えてもらいたい」とあいさつ。内田悦嗣浦安市長は「若年性認知症は家族が長期にわたって介護するのが現状。この問題は街ぐるみで解決する必要があります」と話した。
社会参加が大きなカギ診断後も孤立しない地域社会を
基調講演は、全国若年性認知症家族会・支援者連絡協議会会長で精神科医の宮永和夫氏による「若年性認知症の理解と予防」。
宮永氏は「診断された後の社会参加が大きな課題」とし、「社会に参加することは、当事者が生きがいや自分の価値を認めることに大いに役立つ。決して孤立せず、福祉などの社会資源を積極的に利用するように。同時に、謝金を受け取って仕事をすること。この両立が求められます」と呼びかけた。
若年層にマッチするサービスが必要
続くトークセッションには、市内在住の当事者の妻が登壇した。夫が62歳で発病し、うつ病も併発。相談する人もなく不安だったとき、家族会で同じような境遇の人から励ましてもらったという。
認知症患者向けサービスは高齢者対象であるため内容が若年層には合わず、当事者が行きたがらないことが多い。施設側も、体力があり力も強い若年者の利用に不安を感じて、利用を断るケースもあるそうだ。そのため、家族が介護する時間が長くなりがち。「若年性認知症の当事者の居場所作りは大きな課題です」と訴えた。また、「認知症サポーター養成講座」の受講者は多くいるものの、若年性認知症当事者のニーズとのマッチングがうまくいっていないと感じるとも話した。「若年性認知症の当事者とその家族が孤立しない仕組みを作ること、市民の理解を増やして、『安心して認知症になれる街づくり』が必要」と結んだ。
2回目のシンポジウムは今年11月24日(日)に開催予定。